人を動かすのは、何よりもその人の「あり方」
人を本当に惹きつけ、周囲を動かしていく力は、その人の「あり方」に宿ります。
器の大きさ、誠実さ、人間味。
私はそれらを「人間性」、あるいは「精神の健全性」と呼んでいます。
特にリーダーの立場にある人ほど、強さの奥に柔らかさや余白を内に宿しています。
日本の経営史を振り返れば、京セラの稲盛和夫氏は「人間として正しいことを貫く」という信念を経営の根本に据え、その健全な人間性が社員の心を動かし、企業を大きく成長させました。
健全な気質と成熟した人間性こそが、組織を前進させる最大の推進力なのです。
人間性の向上は、社会で成功する土台となる
私自身、かつては悲観的で、自滅的な思考パターンに悩まされていました。
「切り替えたい」と頭では願っても、心が沈み、思考も行動も鈍ってしまう。
ちょうどその頃、『EQ(心の知能指数)』が世界的に注目を集めました。「社会で成功するにはIQでなくEQだ」というメッセージに強く惹かれ、自分も高めたいと努力しました。
しかし、人間性がすぐに高まったわけではありません。
人間性を高める第一歩は、気質理解から
なぜ成果が出なかったのか。
今振り返れば、それは「性格や考え方は意志の力で自由に変えられるはずだ」と思い込んでいたからだと気づきます。
理想ばかり追いかけ、自分自身の現在地=生まれ持った気質を直視していなかったのです。
エニアグラムは、人の気質を9つに分類します。
それは「快と不快を感じるポイントが人によって違う」というシンプルな事実を示すものです。
たとえば小さな子どもを見ればよく分かります。誰にでも気さくに話しかける子もいれば、お母さんの後ろに隠れて様子をうかがう子もいる。
理性よりも本能に近いこの反応の違いこそ、気質の差です。
大人になっても、この気質が無意識の選択や行動を左右しています。
だからこそ「自分の心は何に動かされるのか」「どんな傾向を持っているのか」を理解し、受け止めることが、人間性を高める第一歩になるのです。
気質ごとの成長マップを示すエニアグラム
気質を理解すれば、自ずと成長の方向性や心のバランスの整え方が見えてきます。
たとえば、タイプ4(個性派)の課題は感情の浮き沈みです。未熟な段階ではそれに苦しみますが、成長すると感情の深さと落ち着きを併せ持ち、衝動的な言動が減り、周囲との関係も良好になります。
このようにエニアグラムは、すべてのタイプについて「成長のマップ」を描き出しています。
人は誰しも、偏りやアンバランスさを抱えて生まれてきます。
大切なのは、それを否定するのではなく、理解し、受け入れ、意識的に整えていくこと。
人間性を磨く取り組みは、人間力を高め、リーダーとしての魅力を引き出し、人生全般を豊かにしていきます。
強く、しなやかに、人を導く
現場で成果を出しながら、同時に組織を育てる。
その両立に本気で向き合うリーダーには、揺るぎない軸と柔軟な感性が必要です。
私は、そんなリーダーたちの気質という個性に寄り添いながら、本来の強みを発揮できる状態を一緒につくっていきたいと考えています。
- 人が育つことで、組織は変わる。
- 魅力ある人が、魅力ある場をつくる。
これは、職場でも家庭でも、変わらない原則です。
私について
- 社会保険労務士として、経営者に寄り添いながら人と組織に関わってきました。
- 産業カウンセラーとして、悩みや葛藤に耳を傾ける経験を積んできました。
- エニアグラム(9タイプの気質理解)をベースに、性格構造の理解から行動変容までを支援しています。
現在は、「気質理解 × 組織マネジメント」を軸に、個人と組織の両面から「人が育ち、成果が出る場づくり」に取り組んでいます。
最後に
人には、生まれ持った気質があります。
それは、思考・感情・行動の「無意識の傾向」として、日々の選択に影響を与えています。
この気質を理解し、乗りこなすことができれば、感情の扱い方、人間関係、リーダーシップスタイルが大きく変わります。
経営やマネジメントの実務に取り組むうえで、まず向き合うべきは「自分自身」です。
自分を深く知り、他者と向き合う力を育てる――そこから組織は動き出します。
気質理解は、単なる自己啓発ではありません。
経営に直結する「人間力の開発法」です。
ともに探求し、新しい可能性を切り拓いていきましょう。