「自分がわからない」という感覚の正体

窓から光が差し込む部屋の画像

この「心の話」では、私が人の心について考えてきたこと、学んできたこと、そして日々の中でふと立ち止まった「なるほど」を書いていきます。

その入口として、今日は「自分がわからない」という感覚から。

「自分がわからない」という感覚、思い当たりますか?

そう感じている人は、意外と少なくありません。それは意志が弱いからでも、感性が鈍いからでもないのです。

どう感じているのか、何を選びたいのか、どんな人間なのかさえ曖昧になる。頭で考えても、心を覗いても、正解が霧のようでつかめない。

この感覚はどう生まれるのでしょうか。

この記事では、その構造を紐解いていきます。

自分がわからない状態の内側で起きていること

私たちは本来、自分の感覚に根ざして生きるところから始まります。

赤ちゃんは欲求に迷わず泣き、幼児は「自分でやりたい」を繰り返し、失敗しながら学ぶ。この段階で「私は何者?」など悩むことはありません。

ところが成長のどこかで、一部の人は自分の感覚より、外の基準を優先しはじめてしまう。

そのきっかけはどこにあるのでしょうか。

「自分がわからない」の背景にあるのは、自分への信頼(自信)の欠如

自分の判断を信じて生きるには、「やってみる、うまくいく」を何度も積み上げる経験が欠かせません。

子ども時代にそれを支えるのは「大丈夫、やってごらん」「失敗してもいいんだよ」という大人の温かいまなざしです。

人は、何もないところから自分を信じられるわけではありません。周りの人を信頼できてはじめて、自分を信頼する力が育ちます。

信じてもらえた子は、トライ&エラーを繰り返しながら、自分を信じる力を伸ばしていきます。最初は日常の延長のような小さな挑戦でも、やがて大きな挑戦ができるようになるのです。

クライミングする女性の写真

しかし、

  • 試す前に止められる
  • 親が先回りしてやってしまう
  • 失敗に対してネガティブに反応される
  • 話を聞いてもらえない
  • 気持ちを否定される

こうした環境では、挑戦する気持ちはじわじわと削がれ、自分を信じる力(自己効力感/自信)が育ちません。

その結果、

  • 「これで合ってる?」
  • 「どっちが正しい?」
  • 「私が変なのかな?」
  • 「最初から正解を教えてよ」

と、判断基準が外側に移動していきます。

「こうしたい」という感覚は少しずつ霞むように見えにくくなる。

これが「自分がわからない」という状態の土台です。これはタイプ関係なく、誰にでも起こり得る構造です。

空を眺める女性の後ろ姿の写真

学校や社会で感情が見えなくなるきっかけ

幼少期が順調に育っていても、学校や社会の中で

  • いじめ
  • 浮く経験
  • 拒絶・無視
  • 恥をかく体験
  • 比較されるストレス
  • 価値観の押し付け

こうした出来事に直面すると、次のように学んでしまうことがあります。

「本音を出すと危険」
「気持ちよりも安全を優先しよう」
「自分の意見は必要ない」

そして、感情をそっと封印してしまう。

その瞬間から、内側の声は聞こえにくくなっていきます。

同じような経験でも影響の大きさは変わる

同じ出来事を経験しても、心への影響の深さは人によって大きく変わります。

まず、大きいのが、自分への信頼度(自己信頼)の差です。

自己信頼の土台がゆらいでいると、受ける痛みは深く、大きくなりがちです。もともと「私が間違っているのかな」と不安を抱えているところに強い否定が重なれば、その不安は一気に現実味を帯びてしまいます。

反対に、内側にある程度の自己信頼が育っていれば、同じ言葉を聞いても、「それがすべてじゃない」「その人がそう言っているだけ」と受け止める余裕が生まれます。

その強さの源は、幼い頃から「やってみていい」「失敗しても大丈夫」と積み上げてきた経験、そして何度も信じてもらえた経験です。

また、信頼して相談できる相手がいるかどうかも、影響が長引くかどうかを大きく左右します。頭にガツンと岩をぶつけられるようなショックを受けたとき、子どもが一人で抱えるには大きすぎます。

安心して「怖かった」「つらかった」と言える人がいるか。

そんな自分をバカにせず、必要以上に騒ぎ立てることもなく、一緒に状況を整理し、どうすればいいか考える大人がいるか。

その違いによって、出来事が傷になるのか、経験として消化されるのか、その後の展開は大きく変わります。

「自分がわからない」に陥りやすい3タイプ(エニアグラム)

「自分がわからない」という感覚は、ここまでお話ししてきたような土台の上に誰にでも起こり得るものです。

けれど、「どこで迷いやすいのか」「どんなふうに自分を見失いやすいのか」は、人によって少しずつ形が違います。

その違いを理解する手がかりになるのが、エニアグラムという人間理解の枠組みです。

今回は、その中でも特に迷いやすさが表に出やすいタイプ4、タイプ6、タイプ9を例に、「自分がわからない」がどのように起こるのかを見ていきましょう。

タイプ4:内面の深みで迷子になる

  • 感情が多層的で本音がわからない
  • 感じすぎて真実が見えにくくなる
  • 「わからない」が存在価値に直結しやすい

アイデンティティの根本が揺らぐタイプ

タイプ6:不安の渦で迷子になる

  • 未来の危険ばかり想像して判断不能
  • 他人の意見が正しそうに感じる
  • 安全が確保できないと決められない

不安のノイズで内側の声が聞こえないタイプ

タイプ9:同調しすぎて迷子になる

  • 合わせ続けて本音が弱くなる
  • 「なんでもいい」が習慣化する
  • 自己主張の芽がしぼんでいく

静かに溶けていくように迷子になるタイプ

水をすくう手の写真

自分の迷い方に心当たりはありますか?

ここまで読んで、「私はどの迷い方に近いだろう?」と思ったなら、それはもう自分との対話が始まっている証拠です。

もし特に、

  • 感情が深くて整理できない
  • 正解が欲しいのに、正解が嫌
  • 「私とは?」が人生テーマになりがち

こんな感覚があるなら、タイプ4の迷い方の解説が役に立つかもしれません。

自分がわからないと感じる時に起きているエニアグラムタイプ4の深層構造

結び:自分を取り戻す一歩

「自分がわからない」という感覚は、何かを失ったサインではなく、むしろこれから自分を取り戻す準備がはじまっているサインでもあります。

迷いの形は人によって異なりますが、自分のパターンや揺れやすいポイントを知ることは、内側の声を再び聞き取るための大きな助けになります。

今日どこかで「これ、私かも」と思ったところがあったなら、どうかその感覚を見逃さず、大切にしてあげてください。小さな気づきでも、それはたしかに自分を掴む一歩です。

焦らなくて大丈夫。自分のペースで、少しずつ内側の感覚を取り戻していけますように。