― 強さの奥にあるやさしい心を知る ―
夕方の公園。ブランコをめぐって、声を荒げる子どもたち。その中のひとり、あかりちゃん(7歳)の弟が、友だちに割り込まれて、少し後ろへ押されるように引いてしまった。
その瞬間、あかりちゃんはすぐに駆け寄り、「やめてよ!今、うちの弟のこと、押したでしょ」とまっすぐに言い放った。
大人の目線が注がれる中でも、彼女の目は怯えていない。むしろまっすぐで、弟を守る意志に満ちていた。
やさしい勇者の素顔 ― タイプ8の子の気質をひもとく
タイプ8はどんな子ども?
エニアグラムタイプ8の子どもたちは、正義感とエネルギーにあふれた「自分と大切な人を守るために戦うリーダー」です。自立心が強く、信じることを貫こうとする力強さを持っています。
その背景には、「傷つけられること」や「コントロールされること」への強い恐れがあります。タイプ8の子は、「弱さを見せたら支配されたり傷つけられたりするのではないか」という不安を抱えており、その不安を隠すために「強くあろう」とするのです。
- 恐れ: 傷つけられること、支配されること
- 動機: 自分や大切な人を守りたい、自分の意志で生きたい
- 焦点: 力、正義、フェアさ
- 戦略: 強くあることで、相手に支配されないようにする
タイプ8の子は、はっきりと自分の意見を伝えたり、不正に対して強く反応したりすることがあります。一見すると「強い子」「頑固な子」に見えるかもしれませんが、その行動の奥には、「弱さを見せたら生きづらくなる」という繊細な心の動きがあるのです。
タイプ8の子あるある ― よく見られる行動例
タイプ8の子は、以下のような行動をよく見せます。
- 間違いや不公平に敏感で、納得できないことには堂々と反論する
- 弱い立場の人をかばおうとし、自分が怒られても気にしない
- 自分の決めたことに強いこだわりがあり、指示されることを嫌う
- 家族や友達を「守る」意識が強く、責任感を持って行動する
- 物事を白黒はっきりさせたがり、あいまいさにイライラすることも
これらの行動の根底には、「自分が弱く見られてはいけない」という無意識の防衛があります。タイプ8の子どもは、本当はとても繊細で、信頼できる人には驚くほど素直な一面を見せてくれます。
タイプ8の子の学び方とコミュニケーションの特徴
学習スタイル
- 実践重視型
体験や挑戦の中で力をつける。理屈より実感重視 - 自分で決めたい
やらされるより「自分で選ぶ」ことで意欲が湧く - 即断即決
学びの場でも直感的に判断し、素早く動く - 強さを求める
「できるようになりたい」「勝ちたい」気持ちがエネルギーになる
コミュニケーションスタイル
- 信頼には忠実
一度心を許した相手にはとことん応えようとする - ストレートで力強い
思ったことを率直に言う、パワフルな話し方 - 主導権を握りたがる
話し合いの場でも、自分がリードしたい意識が出る - 感情表現が直球
怒りや喜びをはっきり表す
タイプ8の子が心を開くために:親ができる5つのサポート
自分の気持ちに正直で、強さを大切にするタイプ8の子どもは、ときに反発的に見えることがあります。でもその内側には、まっすぐであたたかい心がしっかりと育っています。信頼できる大人との関係の中で、少しずつ心を開いていくのが特徴です。
- 一貫した姿勢を見せる
ルールを適当に変えたり、不公平に感じさせると、一気に信頼を失います。親が正直で、公平な姿勢を貫くことで、安心して心を開きます。 - 意見をしっかり聞く
「どう思う?」「あなたの考えが知りたいな」と問いかけることで、自分を尊重されていると感じます。否定せずに受け止めることで、心を開きやすくなります。 - 感情を認めてあげる
強くあろうとするあまり、感情を隠すこともあります。「泣いてもいいんだよ」「怒るのは自然なことだよ」と、気持ちをそのまま認めてあげましょう。 - やさしさを強さとして伝える
やさしくすることは弱さではなく、本当の強さだということを、日常の中で伝えていきましょう。「そのやさしさ、すごくかっこいいね」と言葉にして伝えるのがポイントです。 - 力で抑えず、力を認めて導く
「指示」や「命令」は逆効果。リーダーシップや強さを持つタイプ8の子どもには、「あなたならできる」と任せ、導いていくスタンスが合います。
タイプ8の子を深く知るためのキーワード
規則と自主性
- 不公平なルールには反発する
- 意味のない決まりは無視する
- 境界線を押し広げようとするのは、「自由でいたい」から
パワー
- 自分の強さが役に立つとき、イキイキする
- 退屈だとトラブルを起こしがち
- 真剣に取り組める「仕事」が好き
真実
- 新しい考えに最初は抵抗するが、納得できれば受け入れる
- 経験ベースで習得、「やっているうちにできるようになる」
- 本気の対話であれば、考えを変えることもある
タイプ8の子育てQ&A ― 強くありたい気持ちを支えるサポート
Q1:とにかく負けず嫌いで、勝ち負けにこだわります。どう声をかけたらいい?
A:「負けたくない気持ち」を否定せず、成長の視点につなげていきましょう。
タイプ8の子は、自分の強さや存在感を大切にしたい気持ちがとても強く、「負け=弱さ」と感じやすい傾向があります。まずはそのエネルギーを認めつつ、「挑戦すること自体がかっこいい」という価値観を育てていくことが大切です。
声かけ例:「くやしいって思えるのは、本気で取り組んだからだね」「勝ち負けより、どう挑んだかが大事だよ」
Q2:思い通りにいかないと、すぐ怒ったり人に強くあたってしまいます。どう対応すれば?
A:「怒りの奥にある本当の気持ち」に気づけるよう、安心感をもって寄り添いましょう。
タイプ8の子は、不安や傷つきやすさを見せるのが苦手な反面、心の奥はとても繊細。
感情が爆発しそうなときは、「本当はどう思ってるのかな?」と静かに気持ちをくみ取る姿勢が、信頼関係を築く一歩になります。
声かけ例:「怒ってるように見えるけど、何かモヤモヤしてるのかな?」「大丈夫、一緒に考えよう」
Q3:親や先生など大人の言うことに、反発することがあります。どう接すればいい?
A:「自分の考えがある」ことを尊重し、対等な対話を心がけましょう。
タイプ8の子は、コントロールされることに強い抵抗感をもちやすいです。頭ごなしに命令するよりも、「どう思う?」「一緒に決めよう」と意見を聞く姿勢を見せることで、信頼と協力が育ちます。
声かけ例:「〇〇の考えも聞かせてほしいな」「一緒にやり方を考えてみようか」
Q4:弱音をまったく吐かず、つらいことも「平気」と言います。本当は無理してる?
A:その強がりは、傷つきたくない気持ちの裏返し。安心してもらえる関係を大事にしましょう。
タイプ8の子は、「強くなければいけない」と思い込んで、感情を押し込めてしまうことがあります。「本音を話しても大丈夫」と感じられるような、弱さを受けとめてくれる大人との関係が、心の柔らかさを育てます。
声かけ例:「がんばってるの、ちゃんと見てるよ」「つらいときは、話してもいいからね」
Q5:リーダーシップを発揮したい気持ちが強く、周りと衝突してしまいます。どう見守れば?
A:「リーダーになる素質」を認めつつ、相手への配慮や協調性も育てていきましょう。
タイプ8の子は、自然と人を引っ張る力を持っています。その強さが「自分中心」に偏りすぎないよう、「相手の気持ちを考える」経験を積ませることが大切です。
声かけ例:「みんなのこともよく見てるね」「自分の意見も大事だけど、〇〇ちゃんはどう思ってるかな?」
こんなときこそ思い出したい「タイプ8の魅力」
- エネルギッシュでパワフル
- 困っている人を守ろうとする正義感がある
- 物おじせず、自分の信念を貫ける強さ
おわりに:強さの裏側にあるもの
タイプ8の子は、「自分で立ちたい」「人に負けたくない」気持ちが誰よりも強い反面、心の奥には人一倍繊細な感受性が隠れています。
その力強さを否定せず、安心できる関係の中で本音を話せる経験を増やしていくことが、柔軟さとたくましさのバランスを育てます。
お子さんの気質タイプを理解するには、親自身の気質やコミュニケーション傾向を知ることも大切です。セッションでは「どう接すれば伝わるのか?」「なぜイライラしてしまうのか?」といった疑問を整理しながら、自分と子どもの関係性を見直すきっかけづくりをサポートしています。
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