― 何よりも調和を優先する子の心の奥を知る ―
「おにごっことかくれんぼ、どっちがいい?」
「私はおにごっこ!」
「ぼくはかくれんぼがいい!」
公園に元気な声が響く。子どもたちは遊びの相談に夢中だ。その中で、ニコニコと静かにみんなの様子を見ているソウタくん(8歳)。
「ねぇ、ソウタはどっちがいいの?」と誰かが聞くと、ソウタくんは少し戸惑ったように笑って、「え、ぼくはどっちでもいいよ」と答えた。
それは、無関心ではなく、みんなが楽しく過ごせるなら自分の希望は後回しでいい、という優しさの現れ。気づかれにくいけれど、そんな静かな思いやりが、場の調和をそっと支えている。
しずかな調和のなかで ― タイプ9の気質をひもとく
タイプ9はどんな子ども?
エニアグラムタイプ9の子どもたちは、穏やかで人との調和を大切にする「平和を願う仲介者」です。周囲の雰囲気に敏感で、人と争わずに仲良く過ごすことに安心を感じます。
その背景には、「人とつながっていられなくなること」や「自分が見落とされること」への深い不安があります。
タイプ9の子は、「自分を主張しすぎたら嫌われるのでは」「目立ちすぎたら波風が立ってしまうのでは」という思いから、自分の気持ちや欲求を抑えて周囲に合わせることを選びます。
- 恐れ: 人とのつながりが断たれること、対立によって孤立すること
- 動機: 穏やかな関係を保ちたい、争いを避けたい
- 焦点: 周囲との調和、他人のニーズや空気感
- 戦略: 自分を主張せず、周囲に合わせて平和を保つ
タイプ9の子は、控えめでのんびりした印象を与えますが、実はとても繊細で、他人の気持ちや空気をよく感じ取っています。ただ、その繊細さが「自分の気持ちを言ってはいけない」という思いにつながり、知らず知らずのうちに我慢を重ねていることも少なくありません。
タイプ9の子あるある ― よく見られる行動例
タイプ9の子は、次のような行動をよく見せます。
- みんなの輪に自然となじみ、対立やトラブルを避ける
- 自分の意見をあまり主張せず、周囲に合わせることが多い
- 周りをなごませる存在で、「穏やかで優しい子」と言われることが多い
- 決めるのが苦手で「どっちでもいい」と言いがち
- 楽観的に構えるが、内心では不満や本音を抱えていることも
これらの行動の根底には、「波風を立てて関係が壊れるくらいなら、自分が我慢すればいい」という無意識の選択があります。タイプ9の子どもは、心の奥では「自分も大切にしてほしい」「ちゃんと見てほしい」という願いを持っています。
タイプ9の子の学び方とコミュニケーションの特徴
学習スタイル
- マイペース集中型
自分の好きなことには自然と集中できるタイプ。好きなことを続けていくうちに、自然に知識や技術を身につける - 体験を通じて学ぶ
理論よりも実際に体験して学ぶことが多い。実際にやってみることで自信をつける - くり返しで定着する
一定のリズムを好むので、学びを日常のルーティンに組み込むと継続しやすい - 安定した環境を好む
予測できるスケジュールや、安心感のある場所での学習が得意。突発的な変化にはややストレスを感じやすい傾向
コミュニケーション
- やわらかな話し方
落ち着いたトーンで話す。他人を引き込むような強い主張をせず、聞き手に安心感を与える - 間接的、微妙な言い方
自分の意見を伝えるときは、遠回しで控えめな言い回しが多い - 相手に合わせる
自分の考えよりも、相手の意見に寄り添おうとすることがあり、話の中で自分の気持ちがぼやけることも - 対立を避ける姿勢
意見の衝突を避けようとして話が長くなったり、曖昧な表現が増えることも
タイプ9の子が心をひらく親の姿勢
平和を大切にし、自分の気持ちを後回しにしがちなタイプ9の子どもには、「あなたの意見も大事にしているよ」というメッセージを丁寧に届けていくことが何より大切です。
- 急かさず、安心感を与える
「ゆっくりで大丈夫だよ」という姿勢が、タイプ9の子の心をゆるめる鍵になります。焦らせず、待つことが信頼につながります。 - 意見を引き出す問いかけを
「あなたはどう思う?」とやさしく声をかけることで、自分の考えを表現するきっかけをつくってあげましょう。 - 穏やかな態度を保つ
親が感情的にならず、落ち着いた対応を心がけると、子どもも安心して気持ちを出せるようになります。 - 子どものペースを尊重する
「早くして」と言いたくなる場面でも、できるだけ子どものリズムを尊重してあげることが大切です。 - 無理に主張を求めない
自己主張が苦手なタイプ9の子に対しては、「言わなきゃダメ」という圧をかけるより、「いつでも話していいんだよ」と寄り添う姿勢が効果的です。
もっと知りたい!タイプ9のキーワード
調和
- 内的な調和を保つことを何より優先する
- 対立を避け、グループ内でのバランスを取ろうとする
平穏
- 感情のぶつかり合いのない穏やか環境を求める
- 見通しの立つ、一定の生活リズムで安心する
協力
- 他人と協力して物事を進めることが得意
- 集団の調和を維持するために積極的に協力する
控えめな自己主張
- 意見をはっきり言うことを避けて、話が長くなる
- 自己主張することに抵抗を感じることがある
タイプ9の子育てQ&A ― 平和でいたい気持ちに寄り添うサポート
Q1:自分の意見をなかなか言わず、「どっちでもいい」と答えることが多いです。どう声をかければ?
A:「どっちでもいい」の奥にある気持ちを、ていねいに引き出してみましょう。
タイプ9の子は、対立を避けて場の空気を乱さないように気をつかっていることが多いです。
「あなたはどう思う?」「どっちが好き?」と選ぶ機会を日常的に作ることで、自分の気持ちに目を向ける練習になります。すぐに意見が出てこなくてもゆっくり待ちましょう。
声かけ例:「本当はどっちがいいって思ってる?〇〇の気持ちが知りたいな」「遠慮しなくて大丈夫だよ」
Q2:いつもニコニコしているけど、心の中では我慢しているのかも?と心配です。どう見守れば?
A:「大丈夫?」のひと言が、気持ちを受けとめてもらえる安心感につながります。
タイプ9の子は、自分の感情を後回しにしてしまいやすく、気づかれないストレスを抱えていることもあります。感情を出す練習ができるよう、「イヤだったらイヤでいいんだよ」というメッセージを繰り返し伝えましょう。
声かけ例:「もしガマンしてたら、話しても大丈夫だからね」「何でも言っていいよ。ちゃんと聞くから」
Q3:やるべきことを後回しにして、のんびりしてしまいます。どう声をかけたらいい?
A:責めずに、「一歩踏み出す」サポートをしてあげましょう。
タイプ9の子は、動き出すまでに時間がかかることが多く、「やる気がない」と誤解されがちですが、内面ではいろんなことを感じ取っています。「一緒にやろうか?」と伴走したり、小さな目標を立てて進めることで、エンジンをかけるきっかけになります。
声かけ例:「最初の5分だけ一緒にやってみようか」「ここまでできたら今日はおしまい、って決めてみよう」
Q4:自分の意見を通すより、友達に合わせることが多いです。このままで大丈夫?
A:「自分の気持ちを大切にしていいんだよ」と、安心して表現できる環境をつくりましょう。
タイプ9の子は、調和を大切にしすぎて、自分の本音を見失ってしまうことがあります。人に合わせる優しさはそのままに、「自分も大事にしていい」と伝えることで、自己主張の土台を育てていけます。
声かけ例:「〇〇の気持ちもすごく大事だよ」「周りも大事、でも自分も同じくらい大事だよね」
Q5:「なんでもいいよ」が口ぐせで、意欲がないように見えます。どうすればいい?
A:選択肢をしぼったり、やる気を引き出す工夫をしてみましょう。
タイプ9の子は、「自分から何かを決める」ことにエネルギーを使うのが苦手な傾向があります。
「AとB、どっちがいい?」と選びやすくしたり、楽しさを感じられる関わり方を通して、自発性を後押しできます。
声かけ例:「今日のおやつ、プリンとゼリーならどっちがいい?」「どっちかって言うなら、どっちが好き?」
こんなときこそ思い出したい「タイプ9の魅力」
- 穏やかで人の気持ちに寄り添える
- 場の空気を和らげるセンスがある
- 誰とでも自然に調和できる安心感を持っている
おわりに:調和の中で自分を大切にする
タイプ9の子は、「意見を言ったり主張したりすると、調和を壊してしまう」という思い込みから、本音を抑えることがあります。でもその奥には、人とのつながりや、あたたかな安心感を大切にしたいという深い優しさがあるのがタイプ9の本質です。
自分の気持ちにも目を向けていいんだと伝えることで、少しずつ自分らしさを表現できる力を育てていけます。
お子さんのタイプを理解するには、親自身の気質やコミュニケーション傾向を知ることも大切です。セッションでは「どう接すれば伝わるのか?」「なぜイライラしてしまうのか?」といった疑問を整理しながら、自分と子どもの関係性を見直すきっかけづくりをサポートしています。
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