「しっかりしたい子」タイプ6の特徴と育て方のヒント

「しっかりしたい子」タイプ6の特徴と育て方のヒント

― ちいさな守り人の備えの心を知る ―

雨が降り始めた放課後、さくらちゃん(8歳)は空を見上げる友達に気づき、そっと声をかけた。
「ねぇ、傘ないの? 途中まで一緒に入っていく?」
そう言って、彼女は傘を広げた。

もしものときに備えて、さくらちゃんはいつも学校に傘を置いている。そんなちょっとした用心も、彼女にとっては大事な安心のかたちなのだ。

不安のとなりにある優しいまなざし ― タイプ6の気質をひもとく

タイプ6はどんな子?

エニアグラムタイプ6の子どもたちは、「安心できる場所」を本能的に求める、慎重で思慮深い探求者です。

その背景には、「自分ひとりではうまくやっていけないのでは」という深い不安があります。この不安は、「見放されたらどうしよう」「誰も助けてくれなかったら…」といった恐れとなって現れ、子どもにとっては常にどこかに「備えておかなくては」という気持ちを引き起こします。

  • 恐れ:ひとりでは生き抜けない、守ってくれる存在がいないこと
  • 動機:信頼できる人に守られ、安全な場所に属していたい
  • 焦点:危険・リスク・不確実な未来(安心が脅かされるもの)
  • 戦略:信頼できる人やルールに従い、予測可能な世界を作る

タイプ6の子は、「この人は信じても大丈夫か?」「ここにいていいのか?」を常に確認しながら周囲を観察しています。

不安を感じると、より慎重にふるまったり、大人や信頼できる人の言葉に頼ろうとしたりします。一方で、信頼が裏切られるような出来事があると、疑い深くなったり、警戒心が強くなったりすることもあります。

タイプ6の子あるある ― よく見られる行動例

タイプ6の子は、次のような行動をよく見せます。

  • 先生や親の言うことをしっかり守ろうとする
  • 物事を慎重に進め、わからないことはすぐに確認する
  • 自分が信頼する人に対しては、まっすぐな忠誠心を示す
  • 初めての環境では様子をうかがい、すぐに打ち解けるのが難しいことも
  • 急な変更や予測できない出来事には、不安や動揺を感じやすい

これらの行動の根底には、「一人では守られないかもしれない」という恐れと、「信頼できる存在とつながっていたい」という強い願いがあります。信じられる人や安定した環境の中でこそ、タイプ6の子は本来の優しさや責任感を安心して発揮できるのです。

タイプ6の子の学び方とコミュニケーションの特徴

学習スタイル

  • 慎重な積み上げ型
    しっかり理解してから次に進む、コツコツタイプ
  • 不安の先回り
    「これで合ってるかな?」と確認しながら学ぶ
  • 仲間とともに学ぶ
    信頼できる人と一緒に学ぶと安心して取り組める
  • 予習・復習で備える
    「念のため」の努力が学びを支える

コミュニケーションスタイル

  • 冗談で和ませる
    緊張を和らげるため、ユーモアを交えることも
  • 確認型の話し方
    「これってこうだよね?」と相手の同意を得ながら話す
  • 丁寧で控えめ
    相手を立てつつ、礼儀正しい言い方を心がける
  • 警戒と信頼のバランス
    相手が信頼できるかどうかに敏感で、心を開くには時間がかかる

タイプ6の子が心を開くために:親ができる5つのサポート

タイプ6の子どもは、「安心して頼れる人がいること」で、はじめて心を緩めることができます。常に「これで大丈夫かな?」「信じていいのかな?」と確かめながら、慎重に人との関係を築いていきます。

そんなタイプ6の子が、のびのびと自分を出せるようになるためには、次のような関わりが大切です。

  • 安定した態度で接する
    日々の言動に一貫性があると、子どもは「この人は信じていいんだ」と安心できます。約束を守る、感情の波を抑えるなど、親の安定感が心の土台になります。
  • 質問には丁寧に応える
    不安を抱きやすいタイプ6の子には、「わからないことをそのままにしない」ことが大切です。どんな小さな疑問にも、真剣に向き合って答えてあげましょう。
  • 先の見通しを伝える
    「これからどうなるか」がわかると、気持ちが落ち着きやすくなります。予定に変更があるときは、事前に説明してあげることで不安が減ります。
  • 頼っていい存在であることを伝える
    「困ったときは、いつでも頼っていいんだよ」と日常的に伝えてあげてください。守ってもらえると実感することが、子どもにとっての大きな安心になります。
  • 恐れを否定せずに受け止める
    「そんなの気にしないで」ではなく、「怖かったんだね」「不安だったよね」と、その気持ちをそのまま受け止めてあげましょう。否定されずに理解されることで、子どもは心を開きやすくなります。

タイプ6の子を深く知るためのキーワード

信頼

  • 信頼できる人に指導を仰ぎ、安心感を得る
  • 信頼関係を築くことで、思い切った行動や決断をすることができる

リスクの先読み

  • 不確実な状況に対して強い不安を感じ、慎重に行動する
  • まずは情報を集め、予測を立ててから行動する

忠実さ

  • 信頼できると判断した人には、深い忠誠心を示す
  • 義務感と責任感が強く、任されたことをやり遂げようとする

自信のなさ

  • 不安や疑念が強いため、自信を持つことが難しいこともあるが、支えられると確実に力を発揮する

タイプ6の子育てQ&A ― 不安だからこそ備えたい気持ちに寄り添うサポート

Q1:ちょっとしたことでも「これでいいの?」「大丈夫かな?」とすぐに不安になります。どう声をかければいい?

A:まずは「不安を感じるのは悪いことじゃない」と伝え、安心の土台をつくってあげましょう。
タイプ6の子は、不安や心配に敏感で、「先のことがわからない」状況に強いストレスを感じます。「そんなに心配しないで」と否定するよりも、気持ちを認めてから具体的な安心材料を示すことで落ち着きやすくなります。

声かけ例:「心配になるよね。こうなったらこうするって一緒に考えてみようか」

Q2:いろんなことを親に確認してきて、自分で決められないようです。自立をうながすには?

A:「決める練習」を少しずつ積み重ねていくことがカギです。
タイプ6の子は、間違えることや失敗することへの不安から、判断を他人にゆだねがちです。
小さな選択から始めて、「自分で選んでよかった」という成功体験を重ねることで、徐々に自信を育てていくことができます。

声かけ例:「どっちがいいと思う?理由も聞かせてくれるとうれしいな」

Q3:「もし〇〇になったらどうするの?」と、起こっていないことを想定して不安がふくらみます。どう対応したら?

A:最悪の想定を否定せず、現実的な視点で一緒に整理してみましょう。
タイプ6の子は、「備えておきたい」という気持ちからリスクを先読みしようとします。
「考えすぎだよ」と切り捨てるのではなく、「それも一理あるね。じゃあ、できることはあるかな?」と冷静に考えることで、不安をコントロールする力を育てられます。

声かけ例:「それが起きたらどうしようって思うんだね。今できる準備って何だろう?」

Q4:先生や友達の評価をとても気にしていて、落ち込みやすいです。どうフォローすれば?

A:他人の目よりも「自分がどう思ったか」を意識できるよう促しましょう。
タイプ6の子は、周囲との信頼関係をとても大切にしており、否定的な評価に敏感です。「よくやったかどうか」の基準を外ではなく内側に持てるよう、自分自身の感想や達成感に目を向けるサポートが有効です。

声かけ例:「先生が何て言ってたかも気になるけど、自分ではどうだったと思う?」

Q5:「~してもいい?」と過度に確認してきます。もっと自信を持ってほしいけれど…

A:「確認=不安の表れ」と捉えて、安心をくり返し伝えることが大切です。
タイプ6の子は、自分の判断に自信が持てず、「これで合ってる?」と安心を求めて確認行動をします。ただ突き放すのではなく、「〇〇なら大丈夫だよ」「ちゃんと考えられてるよ」と信頼のメッセージを重ねることが、自信の土台になります。

声かけ例:「そう思ったんだね。〇〇ちゃんならその判断でOKだと思うよ」

こんなときこそ思い出したい「タイプ6の魅力」

  • 慎重で責任感が強い
  • 周囲をよく見て行動する協調性
  • 困っている人を放っておけない優しさと正義感

おわりに:安心の中で成長する

不安を感じやすいからこそ、「どうすれば安心できるか」をいつも一生懸命に考えているタイプ6の子。

親がそれを「心配性」ではなく、「備えたい気持ち」と受け止めて寄り添うことで、その持ち前のやさしさと強さが自然と育っていきます。それはやがて、タイプ6の子の「仲間を守る力」や、「自分との信頼関係を築く力」へとつながるはずです。

お子さんのタイプを理解するには、親自身の気質やコミュニケーション傾向を知ることも大切です。「どう接すれば伝わるのか?」「なぜイライラしてしまうのか?」といった疑問を整理しながら、自分と子どもの関係性を見直すきっかけになります。

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みずさゆ産業カウンセラー | 社会保険労務士
「9タイプ気質診断」(エニアグラム)を通じて、あなたの本質に触れるお手伝いをしています。 産業カウンセラー・社会保険労務士として、企業の社外相談室で多くの方の悩みや変化に寄り添ってきました。 かつて自分自身も“迷う側”だったからこそ、今はナビゲーターとして伴走できる――そんな思いで活動しています。