タイプ3:成果にこだわる「達成者」の力を組織で最大化するには?

タイプ3「達成者」

タイプ3の特徴とは?

成果で価値を測る“戦略型プレイヤー”の行動力

職場において、周囲から「頼れる」「結果を出す」「エース」と認識される存在がいます。

常に前向きで、生産性が高く、プロジェクトを着実に成功に導く──それがエニアグラムでいうタイプ3「達成者」の特徴です。

タイプ3の根源的な動機は、「成功していると見なされたい」「有能だと思われたい」「評価されたい」という願望です。外側からの承認や成果が、自分の存在価値の証明になっているのです。

そのため、目標を設定し、それに向かって効率よく行動する力に非常に長けています。

このタイプは、成果主義の組織環境では特に力を発揮します。数字や指標にコミットし、他者の期待に応えることを重視する姿勢は、経営陣にとって心強い存在でしょう。

しかし、この「成果で自己価値を担保する」という構造は、タイプ3に特有の悩みや落とし穴にもつながります。

タイプ3の職場での強み

スピード・成果・戦略的思考でチームを前進させる

タイプ3の強みは明快です。目的志向が強く、曖昧な状況でも「とにかく結果を出す」ための最短ルートを見つけようとします。多くの場合、以下のような能力が際立っています。

  • 高い目標設定能力と実行力
    どのようなタスクでも、達成すべきゴールを明確にし、そこに向かってスピーディに進む力があります。人を巻き込むのも得意です。
  • 成果・実績にフォーカスできる集中力
    「やるべきこと」と「そうでないこと」を直感的に見極め、余計な時間をかけずに物事を進めることができます。
  • 人の期待を敏感に読み取る能力
    他者が何を求めているかを察知し、それに応じた“成果”を演出するのが得意です。

このような特性から、タイプ3はリーダーシップを発揮する場面にも強く、企業の中核に位置することが少なくありません。

タイプ3が抱える内面の葛藤

成果と本当の自己価値の間にある不安

一見すると順風満帆なタイプ3ですが、内側にはある種の「焦り」や「不安」を抱えていることも少なくありません。

  • 成果でしか自分を認められない不安
    もし失敗したら?達成できなかったら?その時、自分には価値があるのだろうか。そんな問いが、本人を内側から追い立てます。
  • 感情と距離をとる傾向
    本音や感情を表に出すことを避け、自分自身の気持ちにさえ鈍感になることがあります。「感じる」よりも「成功する」ことを優先しがちです。
  • 燃え尽き・空虚感
    目標を達成しても、その後に虚しさを感じやすい傾向も。成果を出しても、「本当にこれが自分の望んだことなのか?」と迷うことがあります。

このような内面は、表面的には見えにくく、周囲からは「順調そう」「いつも元気そう」と誤解されがちです。ですが、本人は常に「もっと頑張らなければ」「まだ十分ではない」と感じているのです。

マネジメントする側が知っておきたい対応のコツ

タイプ3の部下・同僚・経営幹部をマネジメントする際には、以下のような視点が重要になります。

  • 「成果」以外の価値を伝える
    評価だけでなく、プロセス・人間性・存在そのものに価値があると伝えること。たとえば、「あなたの真摯な姿勢がチームに良い影響を与えている」といった言葉が響きます。
  • 本人の感情にアクセスする機会を作る
    「最近どう?」というような雑談の中で、感情を開ける余地をつくると、タイプ3は少しずつ本音に触れられるようになります。
  • 見せかけの成功ではなく、納得感のある成功を後押しする
    「本当にあなたがやりたいことは何か?」を共に探る対話が、長期的には燃え尽きを防ぎ、本人の成長にもつながります。

チームでタイプ3を活かすには

目標設定と表彰の設計がモチベーションを左右する

タイプ3は周囲への影響力も大きいため、組織としては個人プレーヤーとしてだけでなく、チーム活性の牽引役としても活かすことができます。

  • 短期ゴールとフィードバックの仕組みを設計する
    タイプ3は成果が明確で、評価の機会がある環境でモチベーションを保ちます。定例で「成果レビュー」や「達成共有」の場を設けると効果的です。
  • ビジョン共有で「意味」や「価値観」を伝える
    タイプ3は、ともすれば数字や表面的な成功に偏りがちです。経営層が「なぜこの目標を目指すのか」「この事業の意味は何か」を語ることで、本人の深い納得と内発的な動機づけが生まれます。
  • ロールモデルとしての立場を与える
    若手の育成やプロジェクトの旗振り役など、「見られる役割」を担わせることで、より意欲的に取り組む傾向があります。

他タイプとの関係性に注意

成果主義が冷たさと映らないように配慮を

  • タイプ9(調停者)との関係
    マイペースなタイプ9に対して苛立ちやすく、「やる気がない」と誤解することがあります。タイプ9を急かすより、価値観を尊重する姿勢が重要。
  • タイプ6(忠実な人)との関係
    慎重で疑い深いタイプ6に対し、タイプ3の即断即決が軽薄に見えることも。信頼構築に時間をかける意識が必要。
  • タイプ4(芸術家)との関係
    タイプ4の感情表現の深さと、タイプ3の「感情を切り離す傾向」がぶつかりやすい。お互いに世界観を尊重する理解が必要です。

まとめ

タイプ3が「成果」だけでなく「意味」を見出すとき、組織が変わる

タイプ3は、職場において極めて頼れる存在です。しかし、その成果志向の裏には、「愛されたい」「無価値だと思われたくない」という人間的な願いがあります。

経営やマネジメントの立場からは、タイプ3に単なる成果主義を押し付けるのではなく、「存在そのものに価値がある」と伝えるコミュニケーションが大切です。

真の意味での「達成」は、外部からの評価だけでなく、本人が「自分らしく成し遂げた」と実感できること。その実現をサポートできるリーダーシップこそが、タイプ3を活かし、組織全体を成長へ導く鍵となるのです。

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みずさゆ産業カウンセラー | 社会保険労務士
人と組織の可能性は、「気質」への理解からひらかれる。経営やマネジメントにおいて、最も難しく、同時に最も影響力のあるテーマは「人」です。 数字や戦略だけでは動かない組織において、リーダーのあり方こそが、周囲を動かす原動力となります。EnneaLabでは、「9タイプの気質理解(エニアグラム)」を軸に、リーダー自身の自己理解と、組織における人の活かし方を支援しています。