タイプ1:正義感と改善力で組織を律する「改革者」をどう活かすか?

タイプ1改革者

タイプ1の特徴とは?

組織内で理想を貫く“理想主義者”の強みとこだわり

エニアグラムのタイプ1は、「改革する人」「完璧主義者」とも呼ばれ、物事の正しさや改善を強く意識するタイプです。

彼らの根源的な欲求は「正しくありたい」「誠実でありたい」。理想に向かって自他を律し、規律や秩序を守ることで社会や組織をより良いものにしようとします。

「こうあるべきだ」という強い倫理観と責任感を持ち、妥協を許さない真面目さが特長です。その姿勢は、信頼される「道徳的リーダー」としての素地をもたらします。

タイプ1の職場での強み

改善力・責任感・ルール遵守の力を活かす

組織の秩序や品質、信頼性を守る上で、タイプ1は欠かせない存在です。タイプ1の力は以下のように現れます。

  • 高い倫理観と誠実さ
    ルールやモラルを重んじ、公私にわたって誠実な姿勢を貫きます。「言ったことはやる」人です。
  • 改善・改革への強い意欲
    現状に甘んじず、常に「もっとよくできるのでは?」と問い続けます。改善提案やプロセスの整備に長けています。
  • 自己管理・勤勉さ
    感情に流されず、自分に厳しく、常にベストを尽くそうと努力します。真面目で信頼できる存在です。
  • 公平で一貫した判断基準
    好き嫌いで動くことを嫌い、正しさに基づいた判断をしようとするため、信頼性の高いマネジメントが可能です。

タイプ1は、法務・経理・品質管理・経営企画・業務改善など、「正しさ」や「精度」「整合性」が重視される領域において、その能力を存分に発揮します。

タイプ1が抱える内面の葛藤

完璧主義ゆえのストレスと孤独感──それでも理想を手放せない理由

一見完璧に見えるタイプ1ですが、その内側には、常に「自分はまだ足りないのでは」という厳しい自己評価が潜んでいます。

  • 自己批判の強さ
    外に向けて厳しいだけでなく、自分にも非常に厳しく、常に「もっとちゃんとしなければ」と自分を律し続けています。
  • 白黒思考と柔軟性の欠如
    「正しい or 間違っている」という二元的な思考に陥りがちで、グレーな状況への対応が苦手なことがあります。
  • 他者への批判性・堅苦しさ
    自分が厳しい分、周囲のだらしなさや不正確さに強いストレスを感じ、つい口うるさくなってしまう傾向があります。
  • 感情の抑圧
    怒りや不満を「表に出してはいけない」と抑え込むため、知らず知らずのうちにイライラが溜まり、爆発することもあります。

このような傾向が続くと、職場で「厳しい」「細かい」「怖い」存在と認識され、周囲との距離が生まれてしまうこともあります。

上司・経営層が知っておきたいマネジメントのポイント

タイプ1は「信頼され、役割を認められること」で、最も自信と落ち着きを取り戻します。マネジメントのポイントは以下の通りです。

  • 「あなたの基準に助けられている」と伝える
    厳しさや完璧主義が職場に貢献していることを具体的に伝えると、安心して力を発揮できるようになります。
  • 「完璧でなくていい」メッセージを意識的に届ける
    「70点でも十分」など、過剰な基準を緩めてよいことを、繰り返し伝えることが大切です。
  • 意見の違い=人格否定ではないことを伝える
    「それは違う意見かもしれないけど、あなたの姿勢は尊敬している」といった伝え方で関係性を損なわずに対話できます。
  • 感情の受容をサポートする
    怒りや葛藤を悪いものではなく、自然な感情だと認める環境を整えることで、心がほぐれていきます。

チームでタイプ1を活かす

適切な役割配置と評価の伝え方が鍵

  • 制度やルールの整備役として活躍できる
    曖昧な状況を放置せず、「何が正しいのか」を明確にする力があります。マニュアル化や改善提案の推進者に最適です。
  • チェック機能としての信頼が置ける
    見落としや抜け漏れを防ぐ最後の砦として、品質担保や監査的役割で力を発揮します。
  • 長期的な信頼を得る働き方ができる
    一時的な成果ではなく、継続して真面目に取り組む姿勢が、周囲に安心感と信頼を与えます。
  • 慎重で信頼できるフィードバックの担い手
    感情に流されず、原則に基づいて判断するタイプ1のフィードバックは、組織の風土形成に貢献します。

他タイプとの関係性における注意点

タイプ1の正しさが摩擦を生むとき

  • タイプ7(楽天家)との関係
    楽観的なタイプ7に対してタイプ1が「軽く見える」と感じやすい。逆にタイプ7から見るとタイプ1が「堅すぎる」と映ることも。
  • タイプ9(調停者)との関係
    タイプ1が「もっとちゃんとして」と急かす一方、タイプ9は穏やかに受け流す。互いのペースの違いに配慮が必要。
  • タイプ6(忠実な人)との関係
    規律を重んじる点では共通するが、タイプ6の不安に対してタイプ1が叱るような言動をすると信頼が揺らぐ。

まとめ

理想主義を組織の力に変えるために必要なのは、共通のルールと信頼

タイプ1は、組織の健全性・誠実さ・品質向上の鍵を握る存在です。

その強い信念はときに堅苦しく映ることもありますが、本質的には「誰もが安心して働ける正しい環境をつくりたい」という深い願いに根ざしています。

経営層・マネジメント層としては、タイプ1の正義感を評価しつつ、その厳しさが孤立につながらないよう支援することが重要です。

タイプ1が「正しくあろう」とする努力を認め、「完全でなくても大丈夫」と伝えたとき、彼らは柔らかさと堅実さを併せ持った、理想的なリーダーに成長します。

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みずさゆ産業カウンセラー | 社会保険労務士
人と組織の可能性は、「気質」への理解からひらかれる。経営やマネジメントにおいて、最も難しく、同時に最も影響力のあるテーマは「人」です。 数字や戦略だけでは動かない組織において、リーダーのあり方こそが、周囲を動かす原動力となります。EnneaLabでは、「9タイプの気質理解(エニアグラム)」を軸に、リーダー自身の自己理解と、組織における人の活かし方を支援しています。