「なぜか新しいアイデアが出ない」
「現場のスピード感と、上層部の判断が噛み合わない」
「チームが思考停止しているように見える」
組織を率いる中で、そんな違和感を覚えたことはありませんか?
人も揃っている、能力もある、それでもなぜか回らない。
この見えにくい停滞感の背景に、エニアグラムのタイプの偏りが隠れていることがあります。
同じ視点・思考のメンバーが集まると、なぜ停滞するのか
組織が拡大するにつれ、「共感できる人」「一緒にいてやりやすい人」を自然と選びやすくなるものです。その結果、無意識のうちに、似た価値観・判断基準をもったタイプが組織内に偏って集まりやすくなります。
たとえば…
- 堅実でリスクを避けるタイプが多い組織
→ 守りは強いが、挑戦や革新が生まれにくい - 情熱や直感で突き進むタイプが多い組織
→ スピード感はあるが、詰めの甘さや調整不足が頻発 - 論理やデータ重視のタイプが多い組織
→ 正しさには強いが、現場の感情や直観に疎くなる
いずれも、良くも悪くも偏った判断軸で組織が動いてしまうのです。結果として、ある一定ラインは超えられても、チーム全体の視野が狭くなる。そこに、なぜかうまくいかないという感覚が立ち現れます。
エニアグラムで見る「良い組織」とは?
エニアグラムは、人の内面的な動機や行動パターンを9つのタイプに分類する心理モデルです。
この9タイプは、ただの性格の違いではなく、物事をどう捉え、何を重視して動くかの違いを明確にします。
思考優位型
(タイプ5・6・7)
- 重視すること:
論理・予測・可能性 - 役割傾向;
計画立案、リスク管理、分析
感情優位型
(タイプ2・3・4)
- 重視すること:
関係性・共感・意味づけ - 役割傾向:
対人調整、モチベート、ブランディング
本能優位型
(タイプ8・9・1)
- 重視すること:
行動・秩序・直感 - 役割傾向:
推進力、安定性、実行管理
この9タイプがバランスよくいる組織は、
・感情と論理のバランスが取れ、
・挑戦と慎重さのリズムが生まれ、
・全体像と現場感覚の両方が機能します。
逆に、どこかに偏りがあると、見えていない観点が抜け落ちるのです。
タイプの偏りが招く、組織の典型的な停滞パターン
ケース①:「正しさ」にこだわるあまり動けない
──タイプ1・6が多い組織に起こりやすい
「合意を得るまで進めない」「前例がないから止めておこう」など、慎重さが裏目に出て、スピード感が鈍化します。
ケース②:ビジョンはあるのに、地に足がつかない
──タイプ7・3・4が多い組織に起こりやすい
情熱や可能性を語る力はあるが、実行フェーズでの設計や検証が甘くなる傾向があります。
ケース③:「調和」が優先され、核心に踏み込めない
──タイプ9・2が多い組織に起こりやすい
人間関係は良好でも、対立や課題を避けてしまい、重要な意思決定が先送りになりがちです。
「偏り」は弱みではない。見えていない補完力を取り入れる視点
重要なのは、「偏り=悪い」と決めつけることではありません。むしろその偏りは、これまでの組織の強みや文化をつくってきた部分でもあります。
ただし、その強みを活かし続けるためには、対極にある視点との対話が不可欠です。
- 「慎重さ」を持つ組織には、「挑戦」の視点を補う人材を。
- 「スピード」を重視するチームには、「丁寧さ」「地に足の着いた判断」を。
- 「共感性」の高い現場には、「客観性」や「構造化」の視点を。
このように、エニアグラムを思考や価値観の多様性の地図として活用することで、採用やチーム編成、人事配置の段階から、偏りを補う設計が可能になります。
人が揃っているのに、なぜか回らない──そのときこそ内面の多様性に目を向けてみる
今の組織に足りないのは、「スキル」や「人数」ではなく、別の見方・動機をもった異なるタイプの人材かもしれません。
エニアグラムは、単なる性格診断ではなく、「どういう動機で動く人が、どこに、どのように配置されているか」を見るためのツールでもあります。
組織の停滞感を打破するには、「人を入れ替える」ではなく、まずは「見えない偏り」を知ることから。
内面の多様性を設計に取り入れたとき、組織は意図的にバランスを整える力を手に入れます。
「うちの組織は、どんなバランスで動いているんだろう?」
そんな問いから、良い組織の土台が見えてくるかもしれません。思考・感情・行動のバランスを可視化し、人の配置やチームの偏りを見直すヒントをお伝えしています。