子どもが音楽に向き合う姿を見て、「楽しそうに弾いているな」「でも、なかなか練習が続かない…」と感じたことはありませんか?
実は、子どもの音楽習得スタイルには、その子の気質や感じ方が深く関係しています。
私自身も、5歳から近所のピアノ教室に通っていました。ピアノはとっても楽しいし先生も大好き。でも、練習は大嫌いで、よく母に「ピアノの練習しなさい!」と叱られていました。
一人で黙々と練習曲のフレーズを繰り返すのって、子どもにとってはどうにもつまらないんですよね。
でも、そんな私がとたんに演奏がよくなる瞬間がありました。
それは、先生が「ここはおまつりの楽しい雰囲気だよ!どんどんどん!」「ここは元気がなくて、とぼとぼ歩いているんだよ」とイメージで教えてくれたとき。
振り返ってみると、私は感情センタータイプの子どもだったのだと思います。音を感情や物語で捉えると、一気に世界が広がったんです。
そんな体験を思い出したのは、あるジャズピアニストの先生の言葉がきっかけでした。
大人になってから、私はその先生の演奏に感動してレッスンを受け始めたのですが、先生は米国のバークリー音楽大学とジュリアード音楽院で学ばれたピアニストで、こんな風に語ってくれました。
「ピアノは打楽器の要素もあるし、ドラムがいなければリズム隊も担う。ピアノを弾くにも、身体で覚える子、理論で納得する子、イメージを頼りにする子がいる。だから、その子にとって響く伝え方はどれか、考えて教えるの。アメリカではそうやって教えてる。」
この話を聞いたとき、「あぁ、これってエニアグラムの3つのセンターのことだ!」と腑に落ちました。
子どもの頃、私が物語やイメージで一気に演奏が変わった理由も、そこにあったのだと改めて気づいたのです。
このように、エニアグラムの3つのセンターの視点を知ると、子どもの個性に合ったアプローチで音楽をもっと楽しく、深く学べるようになります。
エニアグラムの3センターとは?
エニアグラムにおける「センター」とは、主に物事をどう捉え、どう反応するかの傾向を表すものです。
以下の3つに分類され、それぞれに特徴があります。
- 感情センター(タイプ2・3・4) … 感じること・共感・イメージが中心
- 思考センター(タイプ5・6・7) … 理屈・理解・分析が中心
- 本能センター(タイプ8・9・1) … 行動・体感・反応が中心
このセンター別の捉え方は、音楽の習得スタイルにも反映されやすいのです。
エニアグラムの3センターについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
▶「9タイプ」はどこから来た?|エニアグラムを根底から理解する3×3の構造
感情センター:イメージと感覚で音をとらえる子
特徴
- 音を「絵」や「風景」としてとらえる
- 音の高さや響きを、空間の中に「浮かべて」理解
- 色で音を認識する(例:レ=黄色)
- 楽譜を“絵”のように見て覚える
教え方のヒント
- 「このミの音は、静かな夜に月の光が差し込むように」など情緒的な比喩表現を使う
- 曲の世界観やストーリーを共有すると、感情とともに記憶に残る
- 指導者もイメージで伝えるのが得意なタイプだと、特に相性が良い
思考センター:理論的に音楽を理解する子
特徴
- 音楽理論に関心を持ちやすい
- 和音、調性、拍子など構造的な要素に興味を持つ
- 楽譜は「情報」として読み解く
- 「なぜそうなるのか」を理解することで安心して進める
教え方のヒント
- 音階やコードのルールを言語化して説明する
- 感覚よりも「理屈」が先。納得できると練習がはかどる
- 「ドからミは長三度だから、明るく感じる」など理論と感性を橋渡しする言葉が効果的
本能センター:体を通して音楽を吸収する子
特徴
- 音楽を「聞く」より「感じる」ことで理解する
- 手の動きやリズムで覚えていく
- 実際に「やってみる」ことで上達していくタイプ
- 練習というより「体験」として音楽に触れる
教え方のヒント
- まず手本を見せて、「動き」で教える
- 「体が覚えてきたね」といった身体感覚を認める言葉がけが効果的
- リズム練習や合奏など体を使う場面を多く用意する
- ドラムなど、体感的な楽器に親しみやすい傾向あり
「どの子にも合う正解」はない。違いを知って伝え方を変える
感情センターの子は、共感できる世界観に触れると音に命が宿ります。
思考センターの子は、音楽の仕組みに納得できると安心して伸びていきます。
本能センターの子は、体でつかんだ瞬間に急激に上達することがあります。
「入り口」が違うだけで、どの子も音楽を楽しむ力を持っています。
教える側がその違いを理解してアプローチを変えることで、「先生の言っていることが伝わらない」「この子はなぜ分かってくれないのか」といったお互いのフラストレーションを減らすことができます。
ぜひ、「この子はどこから音楽にアクセスしているのかな?」という視点で関わってみてください。
こちらの記事では9タイプ別の日常の学びのスタイルについて、センターの観点を交えてお話ししています。音楽以外の学習スタイルも知りたい方におすすめです。